大河を前に
梅雨だから致し方がありませんが、毎日灰色の空を眺めています。雲の濃淡が窓を左から右へと流れます。合間に外へ出ようとすると、斜めの風が雨を庇から吹き込んで出足を留めます。
別段の用があるわけでないので、新聞受けを覗き湿気た室内に戻ります。畳の間はさほどではありませんが、板の間は足裏に材質が含んだ水気を感じます。二階の窓から僅かに近くの川の流れが見えます。こんな情景に蕪村の次の句が浮かびます。
さみだれや 大河を前に家二軒
殊更俳句に執心するわけでもありませんが、閑居すれば一句くらい頭に登ってきます。
いつもは川の流れも緩慢で、水量も少ないのですが、ずっと以前対岸にあった町役場が洪水の被害を受け、所管する多量の書類を流失させたと聞いています。以後河川工事に力を入れて河川のための災害は無くなりました。しかしさほど前のことではなく、下流である博多駅近辺の地下街に浸水惨事がありました。
コンクリートの市街地では、蕪村の句のような心細さはありませんが、上流からの溢れる水量が逃げ場を失うと思わぬ災害をもたらすようです。