びっくり腰

先週一寸した重量物を動かして、腰を痛めた。びっくり腰又の名をぎっくり腰ともいう。老人にはさして珍しい現象ではない。しかし挙動甚だしく不自由である。
港町で多少全身酷使する仕事をした二十代のころに、原因不明の発熱のため、医者の診断を受けた。その時代はまだ肺病が危険視されていた。罹患は勿論のこと、感染を避けようとする厳しい目があった。
レントゲン血沈検査などの診断を受けた。いずれも陽性であり、与えられた薬も服用したが、熱はいっこうに引かない。医者は首を傾げた。
近所に年老いた女の按摩さんがいた。わたしの肩にぶ厚い掌を当て、一言「コリャ凝っとる」。願って彼女に全身マッサージを施してもらった。翌朝不思議に熱は引いた。
その後マッサージの施療を受けたことはない。按摩の効用は充分に承知はしているが、くすぐられているような接触感が我慢が出来ないのである。