往来手形

江戸時代、庶民が旅行をする際の、旅行許可券と身分証明書を兼ねたもの。檀那寺・町役人が発行し、関所・番所あるいは所々の役人・寺社などに呈示する。往来書付(広辞苑
いまさら縷々することは無いと思ったのですが、三軒先が国境などの位置にある村落などはどのような便宜な処理がなされていたのかが不明でした。唐津地方の地誌を読んでいたら、次の記述がありました。
急な用事で近国へ行く時のために、代官所は庄屋に板往来を三枚貸し与えている。これに庄屋添え手形を持参して用を済ませている。(藩境に住む厳木村の人々は、佐賀領の多久方面へよく所用で出かけている。このような時、板往来が使われた。)
御科恰土(糸島?)・松浦両部へ行くための板往来も二枚貸与している。
これは文化五年の「諸調書上帳」に記録があるそうです。ここで例示されている地域状況は山間地で隔てはあるとしても旧制中学校の通学区域内に含まれています。
村方の出店では、薬品・酒・豆腐などの日常必需品以外の商品の販売が禁じられ、百姓より商人になるのを禁じ、(商人が百姓になるのは勝手次第)その他多岐に亘る領内の縛りがあったことが分かりました。江戸時代の華美称賛歴史観とは違った世間が続いていたようですね。