広瀬正の「マイナス・ゼロ」

Mini-AMeDAS (AM10:00)
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今日のできごと
今年初めてのマガモの番を見る。
 「昨日の事―福岡市西区今津の浜へ行く。能古島を望むと風強く白波あり。ただ一人磯を掘る老人がいた。多分ゴカイ採りだったのではあるまいか。」

雑 記 帳
 本箱の隅から創刊号の「S―Fマガジン」が出てきました。安部公房が帯を、アイザック・アシモフが祝辞を載せています。1960年12月20日発行 定価120円 地方売価123円、なんとも既に43年の年月が経っています。
 SF小説の好みは仰仰しい宇宙戦争ものより、今でもあらあら筋を覚えている広瀬正という早世した惜しい作家の「鏡の国のアリス」「ツイス」「エロス」「タイム・マシンのつくり方」などの傾向の作品が好きでした。(もう一作あるのですが)
その中に「マイナス・ゼロ」がありますが、簡略に概要は述べ得ません。
三十六年間の時空間を往来する話で、リアリテイを補強する材料にお金が使われています。交錯する時間を古い紙幣で精算するのです。
次の記事は西日本新聞昭和五十年九月二十日朝刊のものです。
九月十八日深夜、福岡市西区の路上でパトロールの福岡西署員が挙動不審な男をみつけた。男は持っていた紙袋を捨てて逃走、残した紙袋の中には大正時代から終戦直後までの間に出回った紙幣が約二百枚。五銭壱円壱拾円など日本銀行兌換銀券、外に旧満州中央銀行券、非兌換の軍票などであった。紙幣が逃げた男のものなら問題ないが盗品の疑いあるとして十九日から捜査が開始された。
その後の警察の捜査は不明ですが、タイム・マシンで過去からやってきた男が紙袋を抛ったのではとその記事を読みながらぼんやり想像しました。「マイナス・ゼロ」を読まれると判ると思いますよ。広瀬正の作品は見直されて欲しいものです。