白熊の毛色

よほどのお方しかお憶えないでしょうが、かつて、全国各地を巡業する「移動動物園ハーゲンベック」というのがありました。私は僅か二週間でしたが、お世話になりました。檻のなかの糞を掃除し、ショウの出番に合わせて、動物たちを演技場へ送りだす役目でした。
演技者は、ラッパを吹く白熊・綱渡りの虎・ジャンプのライオンでした。調教師さんによれば、白熊が一番怖いそうです。虎やライオンは表情があからさまですから、あらかじめ注意を促ながらせられます。調教師さんから聞いたのですが、鞭の音は空を切る音であって、決して動物の体には鞭は当てないのだそうです。
地球温暖化のせいで、白熊クンも難儀しているようです。北極熊の毛皮は白く見えます。しかし毛皮の繊維そのものは無色で、毛の中に小さな空気の泡がたくさん含まれ、この空気の泡が空気中の埃の粒子と同じように入射光を散乱させ、毛皮は白く見えるのだそうです。知りませんでした。
付け足し。芸をせず、ゴロゴロしているライオンの餌は、当時売れ行きが悪くなくなった鯨肉でした。