懐中時計

懐中時計

働くようになってからも、時計を持つことなしに、ずいぶんたったころです。写真機が欲しかったのですが、お金を溜めるという根気がなかったので持てません。いくらボーナスを戴いたかは憶えませんが、ハーフサイズのオリンパスペンという値段の手ごろなものが現れ、渡りに舟の機会を得たので買いました。
ところが、店頭の籤引きで腕時計が当たりました。シチズンだったか、セイコーだったかは忘れました。殆ど買った写真機と同額か近かったと思います。
もともと仕事はあまり時間を頓着せずによかったのです。しかし、着けていれば時計の遅れも気にしますし、煩わしいと感じることがよくありました。
何年かはそれで過ごしたのですが、あるとき―多分夏だと記憶しますが、腕首の汗がやたらと気になり、勧められたこともあって懐中時計に切り替えました。次第に軽いものとはなりましたが、初めは駅長サン用(正確さでは同様ではないでしょうが)と同型の重たいものでした。
百円ショップの安直で、しかも正確に時を刻む商品が出回り、また10億年間も狂いのない時計などの結構な時代です。それにつけても、懐中時計はなぜかちょっと品がいいと思えるのですが。