金魚のあくび

狭い家にも風が吹き通る場所がある。玄関側はアオキとヤツデの間から風が吹きこむ。これはというほどではないが、暑い日差しを避ける木陰の役目くらいにはなっている。
そこでぼんやりしていると、舌打ちのような音が聞こえた。家には七匹の金魚がいる。大小さまざまだが、稚魚のときは同じであった。いまはそれぞれ世代を異なるようである。
水を替えるのを無精して濁っているが、水差しで継ぎ足している。思いがけないほど暑気で蒸発するものである。
金魚はどれも気忙しく息をしている。われわれも同様瞬時も呼吸を怠れない。いやむしろ人様のほうがあくせくしているのかもしれない。蜘蛛の糸にぶら下がっているように金魚からは見えているかもしれない。
折角風通しのいい場所にいてつまらぬ連想になったものだ。