歯磨きの角力

ほとんど毎日のように人間の体臭口臭除去の薬品の宣伝が新聞に掲載されている。たぶん日々のアクの強い食事のせいだと思う。口中清涼剤大礼服仁丹はすでに百年を越す貫禄だろう。
歯磨きは遙か寛永二十年、江戸の丁子屋喜左衛門が朝鮮人に伝授を受けて始まった。大明香薬砂と名付けた一袋のみで、「歯を白くする、口中あしきにほひをさる」と宣伝していたのだが、この三四十年来世上賛美に流れ、新奇を競うようになった。
江戸中には八十種の歯磨があり、正月に角力取り組みに準えて競わせる催しまであった。
それら八十種の珍奇な趣向の商標がわかれば面白かろう。