悪 魔 の 姑

悪魔という字をあれこれ国籍辞典で引いてみたが、まづは大槻文彦言海が随一面白い。
あくま 悪魔 魔ノ条ヲ見ヨ。
ま 1,梵語。麻羅ノ略、共条ヲ見ヨ。2、転ジテ、心ヲ乱ス霊 (タマ)。悪シキ神。麻羅1、梵語 障碍、又、奪命ノ義、利、楽、欲、怒、悩、詐、等凡ソ修道ノ障リトナルモノ。下略シテ麻トノミイヒ、随テ魔ノ字ヲ作ル。2、転ジテ陰茎。(蓋シ、僧侶ノ隠語ニ起レルナラム、障礙ノ最ナレバナリ)
次のスペイン民話は星新一風なお話である。
選り好みばかりする娘に業を煮やした母親、悪魔の嫁にでも、と悪態をつく。それを聞いた悪魔まんまとその娘を嫁にする。母親にとっては当然の成り行き、だがそうなると、娘可愛さのおっ母さん、婚礼の夜、策を以って悪魔を瓶のなかへ捕え込む。あちらでは、「おんなは悪魔より三日前に生れた」というそうである。瓶詰めになった悪魔は奥深い洞窟に埋められる。利楽欲怒悩詐を棒呑みにしたヤツは虚しく尻尾を掻き抱いている。世間は平穏、牢獄は空っぽ、訴訟などない。判事も検事も弁護士も皆さんお仕事にあぶれたそうである。