久大線田主丸駅

河童をかたどった愛嬌ある駅舎である。江戸時代の随筆にたちはよくないが、哀れな河童の話がある。
 むかしむかし豊前の国のさるところに、怪しからん川太郎がいた。化け物の分際で人間の若い女性に懸想する。想いを懸けられた若い娘こそ迷惑千万、現心を喪い、病に臥せった。あつかましい河童は再々娘宅を訪ねる。姿は本人の娘にしか見えない。
河童と娘との嬉笑する声を聞かされては、家族身内は羞恥で居たたまれない。なんとも憎らしい河童野郎だが、姿が見えないので口惜しい思いをし続けていた。
 世間には吃驚な、しかしこの場合は貴重な知恵の持ち主がいた。ミミズを日干し固めて燈芯とし、油を注いで火をつけ、その折の娘に近づければ、姿が現れるとことである。
果たしてその効果は歴然、姿を見られた河童は寄ってたかって打ち殺さてしまった。
 幼い頃、河童に逢ったらお辞儀をして頭の皿の水を流してしまえ、水が無くなれば子供より弱い、と聞かされ信じていた。幸いにもいまだ河太郎に遭遇していない。
聞くところ近時人家の周辺に飼い犬が徘徊しているので河童がとんと姿を見せないのだそうだ。